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水洗いレジンの反り対策

 今回は、造形後に発生する反りについて考察します。

 光造形方式の3Dプリンターでは、光硬化性樹脂に光を当てて光重合反応を生じさせて液体の樹脂を硬化させます。

 一般的に、これらの光硬化性樹脂は、人体に付着するとアレルギー反応を引き起こす場合があります。

 そのため、造形後の出力物を洗浄する必要があります。従来のレジンでは、アルコール(IPA:イソプロピルアルコール)での洗浄が必要でした。

 ちなみにIPAは有機溶剤にあたり、可燃性だけでなく、使用する際には保護具(マスク)をする必要があります。さらに使用量によっては有機溶剤使用者専用の健康診断が必要になるなど、一般家庭で扱えるものではなく、知識を有していても、同居する家族等の健康等を留意すると使わない方がよいと言えます。

 この点、水洗いレジンは、造形後の出力品においてアルコールでの洗浄を必要とせず、水で洗浄できるので、一般家庭でも注意すれば、適切に趣味等で使用できる材料です。

 写真は、 3DプリンターSK本舗(フェリデンシア・キャピタル株式会社)の水洗いレジン(グレー)です。インターネットで比較的安定して入手可能です。


 

 この水洗いレジンは、扱いも比較的楽であり、造形時の形状もかなり精度よく出力されます。

 ただ、何回か出力していくうちに気になる点が見つかりました。それは、造形物を3Dプリンターで出力後、水で洗浄し、1日空気中で乾燥させると徐々に反ってくる点です。

 下の写真は5mm厚の板状部材を出力したものです。

出力後、水で洗浄、日陰で2日ほど乾燥させた状態の物です。

 下の写真に示すように板状部材の中央部に対して両端部が露光面側(サポートと反対の側)に反っています。右の写真のように片側でおおよそ3mm程度、全体としては6mm程度反っています。


 この反った状態をできる限り小さくする方法を考えます。一番いいのは、模型製作等でレジンキットを製作する際に昔からよく使われている手法です。それは、お湯で部材を煮て柔らかくなった状態で重しを載せて反りを取るという手法です。

 早速、部材を鍋で見ます。大体2,3分で全体が熱せられると思います。

 なお、煮沸に使用する鍋ですが、レジン専用の鍋を必ず用意してください。今回も煮沸した残り湯が少し白濁していましたので、レジンの成分が溶け出してきていると考えられます。レジンは体に有害ですので、絶対に食材等口に入るものを煮る鍋を使用しないでください。

 

 

 次に、十分に熱した出力物を鍋から取り出し、平坦な場所に置き、重しを載せます。

 この状態で出力物が十分に冷えるまで放置します。

 なお、一回では、反りは取り切れないと思います。その場合、無理に部材に力を入れずに煮沸と重しを載せての冷却を繰り返してください。

 実際、この5mmの板状部材では4回、煮沸と冷却を繰り返しました。


 上の写真は、4回ほど、煮沸と重しを載せながらの冷却を繰り返したものです。徐々に反りが治っています。今回では、6mm反っていたものが、煮沸と重しを載せての冷却を繰り返すことで反りが1mm以下に改善されています。

 この程度であれば、十分使用に耐えると考えます。さらに平坦性が必要な場合は底面全体をやすりで仕上げることで平坦性を向上させることができると考えます。

 

 次に、細い部材等では反りがとり切れないと考えて、物理的に部材を補強することを考えました。

 上の写真の右側の部材は全長110mmの長さの部材ですが、造形完了後、水洗いし、2日ほど乾燥させたものです。この部材でも両端部分が露光面側に反ってしまっています。この部材では、重しを載せて反りをとることが難しそうなので、反りそのものを生じさせないようにするにはどうしたらいいかを考えました。

 レジンの反りの力は意外と大きいので、それに耐えられるだけの材質で補強する必要があります。そこで、金属線をこの部材の内部に仕込むことで反りを矯正、あるいは生じさせないことを目的としました。

 幸い、手ごろなΦ2mmの真鍮線がありましたので、この細長い部材の内部にΦ2mmの真鍮線を仕込むための細長い穴を部材全長に渡って設けてみました。

 30°、45°両方で傾斜した状態で出力してみましたが、全長に渡ってきちんと穴が開いていました。

 なお、真鍮線の直径はノギスで測定したところ、2.01mmでしたので、穴径については、前回の嵌め合いの記事の考察から2.05mmに設定してあります。(ただし、ノギスの副尺の錠が入らないので測定不可)

 出力完了後、水洗いした状態では、穴にΦ2の真鍮線はスムーズに入りました。

 水洗い後、一日経過した状態である程度反りが生じている部材に真鍮線を入れると、途中で引っかかってしまい、最終的には、下の写真のように破断しました。 

 そこで、造形完了後、水洗いした直後にΦ2mmの真鍮線を細長い部材の穴の中に挿入し、そのままの状態で2日間乾燥させました。乾燥させた状態が下の写真の左側の部材になります。

 造形直後に真鍮線を挿入した部材は、乾燥させても反りが生じていません。また、細長い部材の場合、軸と交差する方向の強度を得られません。この方法だと、真鍮線の強度を得られるので、細長い部材でも十分な強度を得ることができます。


 今回の場合、この細長い部材が、カッターの刃のガイドになるため、ある程度の強度が必要でした。実際に使用してみたところ、真鍮線のない部材でも使えないことはないですが、連続して切る場合、刃先がずれることがありました。

 真鍮線で補強した部材では、カッターの刃を支えてくれるので、連続で切断しても楽に作業を続けることができました。

 ちなみにこの治具は、紙やすりを一定の幅で切断する目的の治具です。今までは、紙やすりに定規を当てて切っていましたが、一枚の紙ヤスリを全て同じ幅できるのに10分以上かかっていましたが、この治具を使えば5分程度で切り終えることができました。


 最後に、今回、板状部材の反りについては、煮沸と冷却である程度解消させましたが、細長い部材と同様に変形しやすい部分(板状部材なら両端部間を貫くように)に、真鍮線を仕込むための穴を設け、造形完了後、水洗いをした状態で真鍮線を仕込めば、反りそのものを抑制できると考えます。